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グランフィール(ヤマハW101サイレント)
2019/02/21
アップライトピアノのアクションを改良して、グランドピアノ並みのタッチと音色にする、という「グランフィール」という商品を初めて見たのは、もう3年ほども前のことでした。
その後、ずっと心の奥に引っかかっていて、たまにお客様にお話をすることもあったのですが、昨年11月に、名古屋市港区にある名古屋市国際展示場(ポートメッセなごや)で、およそ1,700社程も集まる異業種交流会に数年前からこのグランフィールも展示をしていて、そこで我々技術者向けに取付研修も行うということで、2日間僕も研修に参加してきました。

そこで改めてこのグランフィールの素晴らしさに感動し、以前から少しお話させて頂いていたお客様に、改めてお薦めをし、昨年12月には2軒のお客様に早速僕が取り付けをさせていただきました。
初めて取り付けをさせていただいた方は、奥様でもう息子さんも大学生になり手も離れたのでまた好きなピアノを弾きたいということで取り付けを依頼されました。

ピアノはヤマハのW101サイレント付きです。
木目の美しいピアノですが、お部屋の響きの関係もありちょっと鳴りすぎる、それで音のコントロールもちょっと難しいピアノだったのですが、それがもう!しっとりとした、表現力豊かな、素晴らしい音になりました!取り付けに行った僕ももちろん奥様も、一様に驚き感激をして、ほんとに僕も付けた甲斐があったと思いましたし、お勧めした僕は正直ホッとしました。

グランフィールとはどんなものか、という詳しいことはまた改めて何かの形でご紹介したいと思いますが、今まで巷にいろいろあった、アップライトピアノだけどグランドピアノの音色に近づいた、とか、グランドピアノのタッチを目指した、とかあったものとは一線を画した、ほんとに素晴らしいものだと思います。
これは、鹿児島にお住まいの藤井さんという調律師さんが考案をしたもので、日本発明大賞内閣総理大臣賞をもらい、世界特許も取得し、ヨーロッパはじめ海外でも今取り付けが始まっている、アップライトピアノの革命とでも言えるものだと僕は思っています。

音の立ち上がりがスッキリとし、(グランドピアノの特徴である)連続打鍵もほぼグランドピアノ並にでき、そのおかげでレガートもよく効く、キーのコントロールも容易になる、アップライトが蘇ります。
取り付け費用はピアノの機種にもよりますが20万円(税別)からになります。
グランドピアノは欲しいけど、諸事情で設置がむつかしくあきらめていらっしゃったお客様、これは素晴らしいですよ。ぜひよろしければご検討ください。
グランフィール(ヤマハW101サイレント)
グランフィール(ヤマハW101サイレント)
ファイロファクスとiPhone6S
2016/04/30
長年愛用してきたスケジュール手帳(昭和62年3月購入のファイロファクス)、最近ほころびも目立ち始め、それでもこれがないともう絶対ダメ、みたいな自分の身体の一部になっていたような道具でしたが、ついに最近意を決して、iPhone6sにスケジュールを移し替えることにしました。
4日前の4/24に作業を始めました。
アイフォンのアプリはlifebearというカレンダースケジュール帳です。

恐る恐る使い始めましたが、なんとか使えそう。
利点としては、なんといっても、いつでもすぐに、スケジュールを書き込んだり確認できること。
もちろんデジタル故の小さな不満はあちこちで感じられますが、逆に検索機能や過去の記録、更にはバックアップといったところまで、かなり信頼して、そして非常に便利に使えそうなので、できれば今まで手帳で扱ってきたデータはすべてこちらに移行しようかと思っています。
今の所一番怖いのは入力ミスによるスケジュールの間違い。
慎重に、気をつけて入力しなくちゃ、です。

それにしてもおよそ30年も愛用した手帳とほんとに別れられるのだろうか(文字通り)と、それが不安です。
まあ、この手帳にはもう少し役目を作って、もうしばらくは一緒にいたいと思っています。
なんたって、僕の仕事ぶりや人生そのものまで、いつもそばにいてずっと見守ってくれた大事な大事な手帳ですから。
ほんと汗も涙も染み込んでいます(笑)。
ファイロファクスとiPhone6S
ファイロファクスとiPhone6S
手回し蓄音機の音
2013/06/08
そのスクェアピアノによるコンサートと時間を前後して、やはり県芸芸術資料館所蔵の、およそ100年前の蓄音機による78回転SPレコードの鑑賞会があり、僕も調律の空き時間を利用して聴かせてもらいました。
この日はシューベルトの魔王と、オー・ソレ・ミオ、2曲の歌曲でした。
蓄音機はもちろん電気なんか使わず、横に着いているハンドルを手でぐるぐる回してネジを巻き、レコード盤に刻まれた音の振動をピックアップで拾い、それを電気の力も何も借りずにそのまま音として(紗幕の中にたぶんある)ラッパから出します。

その音!
もちろん回転ムラとかはそのまま音に出てくるのですが、その音色が何とも言えずリアルで心に迫るのです。
思わずスピーカー?の前にしゃがみ込み、そこから出てくるバリトンとピアノの音に聴き入ってしまいました。ふと見ると、その蓄音機の開いた蓋の内側に、例のあのビクターのマークが貼ってありました。
それを見たとき、僕はあのマークに描かれている犬になった気分でした(笑)。
いやあ! あの犬の気持ちがよくわかりました!

あのリアルさは何なんでしょうね。
音の入り口と出口の間に余計なものが何もないから、あんなリアルな生々しい音になるのでしょうかね。
あの、貧弱な頼りのない音色が僕の心を捉えて離しません。
手回し蓄音機の音
手回し蓄音機の音
スクェアピアノによるコンサート
2013/06/08
一昨日6日は愛知県立芸大の芸術資料館で、北住淳先生によるスクェアピアノのコンサートでした。

僕は朝から調律で、半音とさらに70セントほどもピッチの下がったそのピアノをなんとか半音下がりまで引き上げなければいけません。
何しろ160年ほども前のピアノなので、慎重にしないと何が起こるかわかりません。
普通ですと、70セントくらいなら軽く1回で上げますが、今回は2回に分けて上げるべく取りかかりました。
結局は4回調律をしてやっと何とか持っていくことができました。さらに最後に全体を拾ってやっと落ち着きました。音程もちょうど半音下、なんとなくピチッと落ち着いた感じです。
あと音色のバラツキなども、できるだけピアノにストレスをかけず取れる範囲で取りました。

そうやって迎えたコンサートですが、まずお客さん、と言っても芸大生の方がほとんどだと思いますが、それでも予想以上?の百人くらいは軽く入っていたと思います。
ちょうど所蔵品展示中のコンサートのため、ほかの楽器や美術品が並ぶ中、皆さん思い思いの場所を陣取り、北住先生とスクェアピアノの醸し出す19世紀の音の世界に、文字通り酔いしれました。
現代のアタック音のある、まあそれはそれで明快な音なんですが、それとは違うきらびやかな、ある意味非常にモダンさを感じさせる、美しい木と、ちょっとハイカラな金属音の混じった明るい音です。それが会場の高い天井の空間を満たしました。
プログラムはバッハ、モーツァルトからサティまで、いろんな時代の音楽を味わえて、それも非常に面白かったです。スクェアピアノで純粋に音楽を楽しませてもらいました。
心に残るコンサートでした。

最近よく思うこと、それはピアノ音楽はあの88鍵の細長い鍵盤の上にあるのではなく、その鍵盤の奥にあるのだということ。
ピアノのそのボディから聴こえてくるピアノの響きに、もっともっと耳を傾けなければ、ということを思います。まあ、ちょっとした差なんですが…。

写真はリハーサル風景と本番、そして僕もピアノと記念撮影です(^_^)。
スクェアピアノによるコンサート
スクェアピアノによるコンサート
県芸のスクェアピアノ
2013/05/29
ただ今愛知県長久手町にある愛機県立芸術大学の中にある芸術資料館の展示室で、収蔵資料の展示がおこなわれています。6月12日(水)まで。
実はそこで今展示されている収蔵品のなかに、1850年デンマーク製のスクェアピアノが入ってまして、それの修理と調律の依頼を受け先日より取りかかってます。
一昨日は調律をメインで伺ってきました。
最初、音の狂いはもちろん、音が何カ所か出なかったりあるいは音が止まらなかったりとかで、けっこう大変な状態でしたが、なんとか昨日にはまとまり、演奏も何とか出来る状態になりました。
6月6日(木)16:30からは、音楽学部の北住淳教授による、このスクェアピアノでのコンサートとレクチャーもおこなわれます。

そもそもこの仕事は北住先生より相談を受け、させていただくことになったものです。
写真も載せましたが、こんなスタイルのピアノにしてはしっかりした造りで、アクションなんかも、もちろん今のピアノなんかとはかなりちがいますが、それでも何とか弾ける状態にまでは持っていくことができました。調律のピッチだけが、現在1音近く下がっており、北住先生が、鍵盤を押さえる場所と出てくる音の高さがちがう、とかなり手こずっていました。
でも最終的には半音下がりくらいまでは持っていきたいと考えています。
結構不安ではありますが・・・。

昨日調律が終わった後、北住先生がいろいろ試弾されました。
このスクェアピアノ、ボリュームこそあまり出ませんが、その出てくる音色がとてもすばらしい!
柔らかい艶のある木の響きの音が出て、何か五感に直接響いてきそうな音です。
北住先生が一番最初に弾いたバッハのプレリュード1番の美しかったこと!
心に深く残りました。
展示室にはこのピアノのほかに、チェンバロを始めいろんな楽器や、またその他の美術作品なんかもあり、会場に足を踏み入れたとたん、それらの作品から受ける波動のようなものが、ずっと僕を刺激しつづけていました。何か人生で大切なものを忘れてきた様な気がする、そんなことを思い出させるような、不思議な感触を覚えました。

期間中はずっと入場無料でまた誰でも入れるということで、皆さんももし時間が許せばぜひお越しください。できれば6日のコンサートにでも是非どうぞ!
県芸のスクェアピアノ
県芸のスクェアピアノ