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スタインウェイO型
2019/08/27
昨日調律にお伺いしたお客様のピアノは5年ほど前にご購入いただいたスタインウェイグランドピアノO型。1985年頃製造のピアノです。
そのピアノを弾く幸運な人は当時まだ小学校6年生の息子さんと3年生の妹さんです。
当時すでにヤマハG3を所有されていて、でもそのピアノもすでに40年程も経っていたのでひとつ新しいピアノを、ということでご相談をいただき、当時で言えば国産新品グランドピアノが3〜4台ほども買えそうなお値段でしたが、思い切ってご購入いただきました。でも実際そのピアノを展示場で見ていただいた時は、それはそれは魅力のある素晴らしいピアノだったのです。

それから5年経ちました。
息子さんはもう高3。高校になってからは勉強も忙しくピアノレッスンは辞めてしまいましたが、時々弾いているそうです。そして校内のクラス合唱コンクールではいつもピアノ伴奏を受け持ち、今年も「伴奏賞」をもらったとお母様が嬉しそうに話されていました。
今年なんかは、家ではあまり練習しているふうには見えなかったのでちょっと心配していたのだけど、あとでビデオを見たらなんとノリノリで楽しそうにピアノを弾いていたのでびっくりした、のだそうです。

いいピアノは、特に世界の名器と言われるようないい楽器は、演奏する人に音楽の本当の楽しさを教えてくれるものなんだと思います。私はそんな人たちを今まで何人も見てきました。
皆さんきっと思い切っていい楽器を購入され、でもそのおかけで音楽が本当に好きになり、まさに音楽が人生を支えているくらいにまで音楽が身についていかれた人たちばかりです。
昨日のお客様も、妹さんはまだレッスンを続けています。きっと二人はこれからもずっと音楽をそれこそ人生の友として、歩んでいかれるのだと私は確信しています。見ていてそう思います。
本当に価値のあるものは、持ってみて初めてその持つ意味がわかるものなんだと、いつも思います。そしてそんなことをお伝えするのも私の仕事だと思っているのですが、お伝えするのはなかなか難しいです。
でも伝えなくては、と思います。それが私の使命ですから。
豊かな人生のお手伝い。楽器も私もそれができればいいなと思います。それがまた私の幸せでもあるわけですから。
スタインウェイO型
スタインウェイO型
グランフィール(ヤマハUX)
2019/08/17
今日調律にお邪魔したのは、もう40数年も前からずっとお邪魔しています桑名市多度町の石川様。昭和51年頃にご購入いただいたヤマハUXです。
このピアノも昨年末、私にとっては2台目のグランフィールの取付けをさせていただいたピアノなんです。
今弾いているのは中2のお嬢さん。コンクールとかもチャレンジしており、以前よりグランドピアノを検討して頂いてたのですが、置き場所とかの問題で二の足を踏んでいたところへ、グランフィールの話をさせていただき、あっさりこちらに決めていただきました。
実はこのピアノ、グランフィールを取り付けてから今日が初めての調律で、まだはっきりと使用感もお聞きしてなかったので、今日は正直恐る恐る感想をお聞きしました。
すると、帰ってきた返事が、「いやあ、すごくいいです! 音も綺麗だし、ほんと全然違います。」とのこと。嬉しかったと同時にホッとしました。
お嬢さんは先生のお宅へレッスンに通ってるのですが、(先生宅はグランドピアノです。)先生曰く、「音がしっかりと出せるようになった。大きい音が出せるというのでなく。」
ということらしいです。タッチのコントロールができてきたということなのでしょうか。
先生にはグランフィールのことも何も話してなかったのですが、そのように言われたそうで、「やはり弾き方も変わるものなんですねぇ。」とびっくりされてました。
「ピアノが(本物の)ピアノになった。」と、とても喜んで頂きました。
石川様は現在中学校の先生をしているのですが、グランフィールを取り付けてからご自分でも30数年ぶりにピアノを弾くようになって、今年は卒業式の伴奏もされたそうで、蘇ったご自分のピアノに、すごく満足されていました。
調律師としてはとても嬉しいことです。
仕事の醍醐味ですね。
グランフィール(ヤマハUX)
グランフィール(ヤマハUX)
ブリュートナーC型アップライト
2019/08/13
ブリュートナー C型 アップライトピアノです。
背の高さはヤマハのU1タイプより更に4cmほども低い117cmですが、背の低さつまり弦の短さあるいは響板の狭さを全く感じさせない豊かな響きが出ます。しかも最低音から最高音まで!
20年ほど前に2軒ほどお客様にご購入いただきました。いずれも大変気に入って、と言うより驚きを持ってこのピアノをご愛用して頂いております。
ある方は「初めてピアノでフォルテッシモが鳴らせた。C7メじゃないね。」とも言いました。それほど低音の響きも豊かです。
中音のふくよかな響き、高温の明るいきらびやかな鳴り、素晴らしいアップライトピアノだと思います。いわゆる一つの銘器ですね。
ブリュートナーC型アップライト
ブリュートナーC型アップライト
サイバーチューナー研修会
2019/08/03
昨日は朝から調律師仲間8人ほどが、仲間の一人である釜井孝輝さん所有のピアノフォーラム伊賀に集まって調律の勉強会を行ないました。
理想的?な調律を視覚的に示してくれるというサイバーチューナーなるものを実際どんなものか見てみようという企画です。
とは言うものの、現実はまあ、そんなに興味あるわけでもなく、要はそれを肴に仲間で楽しくやろう、みたいな部分が大きいのですが。
でも実際はそれでもしっかり研修をして、あとはそれぞれの工具を見せあいっこしたり、けっこういろんな情報交換で有意義な時間を過ごしました。
なによりも、こうやって同業者が仲良く集って楽しめる間柄を築けているというのが、とても嬉しいことだし、また価値のあることだと思っています。
仲間は大事にしなくちゃ、ですよね。
そうそう、サイバーチューナーに関しては、まあ、耳で合わしたほうが早いし綺麗、だよね、というのが大方の意見でした。予想通りといえば予想通りでした。もちろん見るべきところはありましたし、それなりに使えるシーンもあるとは思いますが。
綺麗に調律をするというのは、奥深いものです。
サイバーチューナー研修会
サイバーチューナー研修会
ベビーグランドピアノ ニーンドルフ
2019/08/01
昨日は、昔ご夫婦で合唱団「うたおに」のメンバーだった、伊勢市の野中よう子さんの家に調律に行ってきました。
彼女は伊勢市二見町で”♪music room カノン”という音楽教室を主催しており、持っているピアノがもう20年近くも前に購入していただいたドイツ製ベビーグランドNiendorf(ニーンドルフ)145ch。その名の通り奥行き145cmの非常に小さな、かわいい、素敵なデザインのピアノです。
このピアノ見た目も素敵なのですが、その音がまたほんとにかわいい、落ち着いた、なんとも言えないいい音が出るのです。
弾くと、(ちょっと陳腐な言い方しかできないのですが)まるでピアノが何かを語りかけてくるような、そして自分の心の奥にまで深く入り込んでくるような…、言葉ではうまく表現できませんが、でも実際その音が、その教室の生徒さんに与える影響はたいへん大きなものがあるそうなのです。
昨日も調律にお伺いし、その時に彼女に聞いた話なのですが、2年前に中学生になったので一旦辞めた男の子が、最近、「やっぱりピアノがどうしても習いたい」と言って戻ってきたそうなんです。そしてその子、このピアノの前に座って弾き始めたら、なんと涙ぐんでいたそうなんです。
僕もその話を聞いて、思わず涙ぐんでしまいました。ちょっと恥ずかしかったですが。
でもその彼が弾いた、その時に出てきたピアノの音、その音が、彼の心の奥になにか届いて、何か感情を刺激した、だとしたら、いやきっとそうだと僕は、そしてよう子さんも思ってるのですが、だとしたらこのピアノを提供させていただいた僕もとても嬉しいし、きっと彼女もこのピアノを所有する喜びや満足感を感じてもらってるのだろうと思うのです。
一人の将来のある若い男の子の心を揺さぶるピアノの音、調律師としては手前ミソかもしれませんが、そんな音を提供できていることに非常に満足感と幸福感と、そして誇りさえ感じることができた、そんな出来事でした。
ベビーグランドピアノ ニーンドルフ
ベビーグランドピアノ ニーンドルフ